Dear

月は最後に帰る場所。
ずっと行きたいと
思っていた、
彼を愛する迄は。
『月よりも』の言葉は
驚く程自然に

己の口から出ていた。

誰でも必ず訪れる死を認識し乍
『生きてる』と、
感じさせてくれるのは
紛れも無く、彼で。
勿論それだけでは無いのだが、
日々起こる様々な事の中で
薄らいでいた生等の欲が
今はこの胸の内に生まれてる。

あの声で紡がれる言の葉
あの腕が伝えてくれる温もり
安心して背を預けられる胸
でも凭れ掛るだけにはならず。
もう月に帰りたいと思わない。
月より愛してしまった彼が
『愛して良かった』と
誇れる様な己で在れたら、と、
そんな事を願い乍、
精一杯今を生きていられたらな、
･･･なんて事を考える。

別に愛が総て、と
固執した考えは持ってないが、
生きる上での
大事な要素の一つだと思う。
愛する人がいて
大切に思う友人が居て
向けた想いを返して貰えて。

其れがどんなに幸福な事か。