Red

普段必要な事しか
話さない彼の、
唐突なる連絡。
『そろそろか』と
何処かしらで思っていた故
別段驚く事も無く、
ベッドの中で
声を潜めて応対。

『これから会おう』と
言えなくて御免ね。

同じではないけれど
似た様な思考を持つ、あの子。
何時から『太陽と月』と
揶揄されるようになったか
とうに忘れた。

複雑極まりなく絡む糸を
彼から切る事は無いだろう。
少なくとも私ならそうだ。
尤もその辺は己の中で
何を一番大切にしているかで
変わるのだろうが。

腹の底から渇望する程
苦しい位に恋焦がれ、
報われぬ想いに
身を委ねた事は無い、
亡くしたあの人を想う気持ちは
また一寸別物なのだろうし。
願ってももう誰も手に掴めぬ、
結論が出ているが故の安心等
現在進行形で進むあの想いだと
得られぬのだろう、切ない。

だからこそ
愛し愛される事を
奇跡みたいに感じるのだろう。
其の奇跡を、
手にしたがるのだろう。