Remember the kiss

スカウト帰り、
立ち寄った街の、
とあるカフェバー。
一服していたら
珍しく一人で
うろついていた人に、
声を掛けられた。
出会い頭の言葉に
『ああ、彼らしい』と
つい、笑ってしまって。

傾ける珈琲、
互いにブランデー混じり。

手の中に在るのに、
掴む事が出来無くて。
巧く回る事があれば、
どうしようもなくて、
もどかしくて。

誰かに愛され乍
別の誰かを愛して。
巡る環を切ろうにも
生まれる、不安や脅え。

『其れでも愛してる』と
迷い無く口にする、
矢張りお前達は似ているよ。

ほら、お出で。
優しさを忘れない様に、
其の頬に口付けをあげよう。


別れ際、抱き締められた。
耳元で囁かれた言葉が未だ、
響いている。

噛み付かれるより、
ずっとずっと嬉しい。

『　　　　　　　　　　』。