シャンパンカクテル

ヴーヴ・クリコの
手頃な物を一本、
試し用に。
棚を漁って
リキュールだの
キュラソーだのを
幾つか並べて
彼だ是だと試行錯誤。
オーソドックスな
レシピならば
思い出し乍
作れるのだが、
『生み出す』となると
また話は別で。

完成する頃には
結局ボトル一本を
空けてしまっていた、
試したアルコールは
全て己の胃の中に。

甘やかす事しか
昔から出来無くて、
自分の『優しさ』と
称されるものが、
つくづく偽善的な物だと
偶に、痛烈に思う。

あの人が教えてくれた
『優しさ』が残酷過ぎて
何時迄も己の中で
息衝いている。
彷徨って彷徨って、
漸く開かれた扉の
向こう側へと足を進め、
得た安らぎの中にも
時折疼くあの惨酷さ。
脆かった居場所の残像を
掻き消したくて
引っ掻き乍試してる、
己の薄絹を、
ゆっくりと脱ぎ捨て乍。

何時か、
『　　　　　　　』と
泣けるだろうか。

時が経ってからでなく、
伝えたい、その時に。