Wound

無粋だ無粋だと言われ乍も
付いた理由を話せば
『複雑故』と言葉を濁され
結局施術はお流れに。
個人的にどうしようかと
未だに迷っていたので
素直にキャンセル。
誰かに白黒を
付けて貰いたかった、

･･･他力本願。

自宅に辿り着いた、
そのタイミングきっかりに
効いてきた薬、
重くなる、瞼。

其の侭ダウン。
起きたらこの頭痛は
消え失せているだろうか。

Injury

『勝ったら頭痛薬』
『負けたら願い事』

喉元左側
横へ一筋
顎を上げ気味に引いた身
気管に守られた頚動脈
切っ先が掠めた痕が
妙にヒリヒリして舌打一つ
振り払いきった右腕の
手首に手刀
やたらと乾いて響く
メスが落ちる音

御免ね
使えないんじゃなくて
奪うのが好きなんだってば

と言う事で
頭痛薬と一緒に
貴方の右掌を
二週間程奪っておこう

お気に入りのシャツの襟元
着替える時に見たら
鈍色が滲んでいた
漂白剤で落ちるだろうか
取り敢えず首筋に
無様な絆創膏一つ
医者に行ったのに
怪我してりゃ世話無い。

･･･あ。
施術頼むの忘れた（凹）

Cooking

出汁巻き卵と唐揚、
包丁無しでも可能な料理。
本気で包丁は苦手だ、
されど使わずとも
一応まともな物は作れる。
人間避けたい物を避けて
扱える物だけを使っても
案外レパートリーは
広げられるものだ（貴様）

細君に野菜を任せ、
自分は出来る事を。
そう言えばこんな風に、
誰かと一緒に料理だなんて
どれ程振りだろうか。
何かと仕掛けたり、
仕掛けられたりし乍
愉しい一時。

途中で出勤止めようかと
思ってしまった（ぷ）

Chronos

遅い昼飯を食いに行こうと
通りかかった道の塀、
時計草が二つ程
固い蕾を綻ばせていた。
『クロノス、クロノス、
時間よ止まれ』
何かに遅れそうな時は
子供の頃呟いた呪文が
未だに口から出てくる。

時計草を漸く目にすると
『もう夏休みだ』と
幼心に思ったものだ。

今は、
『〆切時間よ延びろ』
･･･何て夢が無い（ふ）

あー、原稿原稿（溜息）
後何ページだったっけか。

Morning

『オハヨ』と
耳元近くで囁いて
髪を一撫でしてから
返事を待たず
其の部屋を後にした

曇り空の下、帰宅。
肌寒い位の気温、
心地好い。

でも結局自宅のベッドで
細君にしがみ付き二度寝。
ひんやりスッキリより
人肌の温もり優先。

オハヨとオヤスミ混合、
幸福なる仮眠。

再び目覚めたら原稿の山。
･･･逃げたい（待）

Solitude

タンクトップ越し、
覗く、墨。
袖の縁を指で辿ったら
擽ったがられた挙句、
結局脱ぎ捨てた。

鮮やかな昇龍に
暫し、見惚れた。

Daddy

仕事で遠方へと出向いて。
朝から霧雨が降り続いて、天気が悪いと気が滅入る。
其れでも基本的に室内での仕事なだけマシ。

夕刻に仕事を終えて電車に乗ったら、
少し離れた所に見覚えのある姿が。
停車駅で人が流れた折に見えた横顔に、
つい声を掛けてしまった。
振り返った相手は矢張りと言うか何と言うか父で。
『Daddy's company was around here?』
『My customer is around here』
実にシンプルな回答だ。
『And, you?』
『I'm a return of work』
･･･何処迄も会話が続かない親子である（ふ）
其の侭幾つかの駅を過ぎた所で下車駅となり、
『TTYL,daddy』
最後迄短い言葉で終わる。

そう言えば久方振りに父の顔を見た気がする、
尤も『外での顔』という意味でなのだけれど。
相変わらず仏教面なのだが
声を掛けた時の一瞬、
口元が綻んだのを見た。

珍しい物を見た、
其れだけで収穫物である。