レアモルト

普段赴いている街に
今行けないから、と、
結局ふらつくのは
殺伐とした混沌の街で。
慣れ親しんだ店の控え室に
従業員でも無い癖に押入り
酒と煙草をかっぱらう。
『俺の愛酒を干す気か』と
店主はガタガタ文句を
終始抜かしていたが
右から左へとスルー（ふ）
ミルバーン35年という
結構在庫切れを
起こしているらしき酒を、
よくもまぁ、二本も三本も
隠し持っているものだ。
侮り難し、隠れ家の住人。

酒が入ってご機嫌な相手、
酔えば莫迦な事を口走り。
気付けば相手は
膝の上で転がってる、
重い事この上無い。
だらけた姿勢で酒に溺れる、
相変らずのこの状態が
何だか過去に
引き戻されたかの様で
可笑しな感覚。

もう肩を突付かれても
後ろには倒れなくてよ。
其れだけが、
過去と今との違う点。

口説き文句、
もう少し捻って言えたら
口端にキス位はしてあげる。

昔の誼で、ね。