背中

仕事、一時間の待機。
只一服しただけで、
終ってしまったけれど。
帰り際、鳴ったメール。
細君からの連絡、
絵描きさんに背を
描いて貰っているらしい。
仕上がり、楽しみ。

胸が好きだが
背も同じ位好き。
誰かの背から得る温もりは
何と無く安心する、
どうしてだか解らないけれど。
今迄他人の背中ばかり
借りてきたような気がする。
私の背も、守って貰っていて。
何人もの人の手が
背を何度と無く押してくれた、
今もたまに、
よろめきそうに鳴った時は
その手の温もりを感じる。
私も誰かの背に
触れているだろうか、
支えられているだろうか。


『辛い』と泣くあの子の、
涙を指先で拭って。
彼が何時も言ってくれる
『大丈夫』を、
何の脈絡も無いのに
紡ぎ続けて。
大丈夫かどうかなんて
彼にしか解らないけれど、
でもそう信じていたいんだ。

君を信じてる。
･･･と、呟いたら。
『裏切らねぇよ』と
鼻を啜り乍彼が笑った。

うん、君は裏切らないね。
何時だって奇跡、
見せてくれるものね。