Violet

解かれた包帯、湿布を外せばほんのり赤みを帯びているだけで、
もう既に大した痛みの疼きも感じない。
尤も人が感じる痛みの度合いとはその人其々であり、
『どうして怪我を負った？』と問われて答えてしまえば
『まだ結構痛い筈だ』と言われそうだ、一般的な返事としては。
其れでも動くし疼きが気になる程度なので
当人としては至って平然としているものである。

結局の所顔や見えるような箇所に痕が残らなければ
個人的には問題は無い。

だから、理由は言わない。
説明が面倒だし（貴様）

興味が無いと言えば嘘になるが普段持ちたいとは思わぬ代物。
冷たい感触、デスクに置かれていた其れに、触れて。

『欲しいのか？』
まさか。
『其れじゃ目を逸らしておけ』
無理。
『お前には似合わねぇよ』
似合って堪るか。

『使うのは俺だ、安心しろ』


使って欲しくないのが本音。
口に出しては言わないけれど。

序でに守られる姫は御免だ。