Nikolaschka

指名客をタクシーに乗せて見送ってから控え室で明日の予定を確認し、
コートを羽織った所で鳴ったメール。
最近めっきりシフトの重ならなくなった彼とは外で掴まえるのが多く、
落ち合って飲むのは殊更に久方振りのような気がする。
ともあれ仕事明けの一杯をこじんまりとした地下バーにて。

ニコラシカ、出された其れは未完成のカクテル。
ブランデーの上に檸檬スライス、小さく山盛りにされた、砂糖。
口中に総て入れて漸く完成する其れは、
店や自分次第で如何様にも味を変えてくれる。
殆どブランデーの一気飲みに近い強い酒はたまに煽る、
チビチビと愉しむ様に飲むのも好きだけれど。

相手の頼んだカクテルから話が膨らみ今宵も音楽話、
ポロネーズ一つ取っても作曲家は結構いるからメロディーを思い出して。

仕掛けた悪戯、即行勝負。
酔いも手伝ったか更なる仕返しをした所でダウンされ、
これ幸いにと『ちょんまげ』(待)とか遊んだ後にお持ち帰り。
どうでも良いがお持ち帰りをしたのは実に久方振りだ（ふ）

相手を起こすのもどうかと思い、タクシーの運転手に告げる己の自宅の住所。
十数センチ差の相手を引き摺るように室内へと転がり込んで、暫しの思案、結局寝室へと。
ウォーターベッドの半分を貸して、自分も転がる。
『貸して』と言われると渋るくせに突発的状況下に置いては
容易く己の寝室を開け放つ、私の『確固たる信念』は案外脆い物らしい（黙）

昼過ぎに目が覚めたら一人だった、
寝惚けた状態で煙草に火を点し、違和感を感じながらも吸い切って。
シャワーを浴びて漸く思考がはっきりとした処で漸く気付いた、
『…煙草の銘柄が違う』

―――――やられた（笑）
ただじゃ起きない人だね、貴方って。