おめでとう、と、また、と

誕生日、おめでとう、と、ﾒｰﾙだけ飛ばす。
良き一日を送れるように。


月が余りにも綺麗過ぎて、
苛立ちを隠しきれなかった。
月の光はいつも私の躰を冷やす、
どれ程酒を浴びようと
其の場凌ぎの美辞麗句を並べようと。
…寒いのは嫌いだ、暑いのと同じ位。

ｽﾋﾟﾘﾀｽでも買って、
煽って眠ってしまおうか。
内側から焼けながら、眠りに堕ちれそう。

ｶｽﾐ草とｾﾌﾞﾝｽﾀｰを持って、
あの場所へと久方振りに訪れた。
先人が居たけれど佇むばかり、海を見つめていた。
『こんな綺麗な月の夜なのに』と
もう一人、やってきた男が呟いていたが、
綺麗だからどちらにしろ印象に残るのだろう
―――あの最低人間の様に。

ｽｰﾂを着ていて、この身長で、
まさか女に間違われるとは思わなかった。
あんな場所でﾅﾝﾊﾟをする位の貴方だから
きっと大丈夫だろうね。
ゆっくりと事の結末を見届けるが良い、
私は弔いの花と煙草を届けに来ただけなのだから。
貴方と私が出会ったのは偶然、次はきっと、無い。


車を飛ばし、ﾊﾟｰｷﾝｸﾞｴﾘｱで着替えて協会へ。
今宵の私は全身棘だらけだ、と、
自覚し自嘲、心の中で。
全て月の所為にしてしまおう、
月齢16.9、満月にほぼ近い貴方の所為だ。
―――…なんて、居もしない人の所為に等出来る筈も無い。